ピアノが上手な人

ワタクシはピアノ調律師なのでよく分かるのですが、世の中のピアノ弾きは基本的に2種類しかいません。
①ピアノが下手な人
②ピアノがすごく下手な人
これが基本で、あとごくわずかに上手な人が存在します。

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これには明らかな理由があります。ピアノ弾きの多くはピアノを非常に熱心に練習するけれど、ピアノのメカニズムに思いを馳せている人がほとんどいないからです。

たとえばモータースポーツの世界ではレーサーはバイクやクルマのメカニズムに精通していることは必須です。メカを自分の手足のように操る必要があるからです。

ポルシェのレース用新型のテスト映像を見た評論家が「新型はひょっとしてミドシップかな?」とつぶやいたそうです。コーナーリングの挙動を見てそう思ったのでしょう。
後日のニュースでレース用新型ポルシェはミドシップと発表されたそうですが、この評論家はクルマの重心がどこにあるのか、という視点でコーナーリングの挙動を見ていたに違いありません。また、そのようなわずかな相違を見逃さないこの人の運転技量が相当のレヴェルであることも容易に想像できます。

ところがピアノの世界ではピアノ弾きは練習こそ熱心なものの、メカニズムに注視することは皆無に等しいのです。これでは上手な人が育つわけがありません。

ピアノが上手い人になりたければピアノのメカニズムに関心を持ち、指の動かし方と音との相関関係に最大の注意を払うことです。

初めて弾いたピアノの感触から「このピアノはひょっとして鍵盤のストロークが長いかな?」などと言えるようにまでメカニズムに精通したら完璧でしょう。

ただ、それをやったからといって著名なピアニストになれるという保証はできませんけどね。